VS嵐は面白い!

嵐が活動休止を発表してから1年が経過。

年末年始の怒涛のTV出演ラッシュが終わったものの、ふと虚無感を感じた方も多いのではないか。

そう、毎年恒例だったお正月SPは2020年でいったん幕を閉じる。

2021年のお正月に、嵐の番組は並ばない。

 

そこで、長年愛されている嵐のレギュラー番組の一つ、「VS嵐」について考察してみたいと思う。

 

VS嵐とは?

VS嵐は、名前の通り嵐とゲストチームが様々なゲームで戦うフジテレビの人気バラエティ番組である。

2008年4月、「まごまご嵐」などを放送していた土曜昼の「バニラ気分!」内の放送枠で始まった企画で、当時は関東ローカルの30分番組だった。

その後2009年10月に現在の木曜19時というゴールデンタイムで1時間番組としてレギュラー化された。もちろん全国ネットだ。それから10年以上放送されている人気番組で、1月3日の新春スペシャルも恒例となった。

視聴者層は?

 あくまで私の独断と偏見による位置づけなのだが、VS嵐の視聴者は大きく分けて以下の3つに分類できると考えている。

①嵐のファン、嵐を好きな人たち

所謂オタクというような、嵐がかかわるものなら何でも吸収しに行くタイプの方々(私含む)はじめ、嵐に好感を持っている程度の人も含む。番組の視聴理由が「嵐が出ているから」になる人。

②番組の固定視聴者

たまたま見て面白かったから見続けている人、この時間はこの番組!とルーティン化している人、など。

③ゲスト出演者のファン

VS嵐(レギュラー回)には、対戦ゲストとプラスワンゲスト(:嵐チームに加わるゲスト。嵐とともにゲストチームと戦う)が存在する。毎回見るわけではないけど、好きな俳優さんや芸人さんが出演される時だけVS嵐を見るという方がここに該当。

なぜ面白い?

 現在、VS嵐公式HPに掲載されているゲームの数は20種にも及ぶ。さらに、近年は「特別企画」と題して、番組中盤にクイズ系の新ゲームも続々と実施している。

先ほど挙げた3つの視聴者層とともに、番組の人気の秘訣を考察していく。

 

■オープニングトーク

VS嵐には、「嵐5人だけのオープニングトーク」がある。番組冒頭で、「放送日は〇〇の日らしいので、今日は〇〇について話しましょう」とか、シングルやアルバムのリリースタイミングにレコーディングや撮影時のエピソードを話したり、メンバーの誕生日に近い放送日の時は必ずお祝いをしてくれる、そんな時間である。

嵐のファンは、「5人の仲が良いところ」や「5人でわちゃわちゃ話してる姿」が大好きである。オープニングトークは、ゲストやアナウンサーもなく、本当に5人で喋っているだけなので、ファンにとっては非常に嬉しい時間だ。

正直、ゲスト目当ての視聴者の方には不要な時間かもしれないが、番組開始から1~2分の短尺なので大目に見ていただきたい。

また、実はこの「オープニングトーク」という企画は、番組としても非常に面白いものではないかと考えている。と言うのも、

 ・バラエティ番組

 ・レギュラー出演者が複数人いる

 ・毎回ゲストを迎える

という条件の中で、ゲストを迎えるホスト側の出演者の個人的な話というのは、他の番組ではあまり見たことがない。ゲストとのトークの中で、ホスト側のエピソードが出ることはあっても、あくまで話のメインはゲストである。VS嵐のオープニングトークは、ホストである嵐が主役になってよい時間なのだ。ファンではないけどなんとなく見ている層の方々も、実はオープニングトークを通して比較的コアなエピソードを聞かされている。

 

■番宣のしやすさ

バラエティ番組に呼ばれるゲストは、たいてい何らかの宣伝がある。ドラマ・映画、舞台への出演や、CD・書籍類の発売を宣伝するタイミングで露出を増やす。ところで、バラエティ番組で番宣目的のゲストに対して「そう簡単にはお知らせをさせませんよ」といった演出を見たことはないだろうか。ゲームに勝てば番宣タイム獲得、とか。明らかに宣伝目的の出演だとわかっているのに、なかなか核心に触れない構成にイライラした経験のある方も多いのでは。

ここで話を戻すと、VS嵐は番組開始の数分間は、先ほどのオープニングトークが繰り広げられるが、その直後に対戦ゲストとプラスワンゲストが招き入れられる。そして、その場で番宣をさせてもらえるのだ。嵐との軽妙なトークの中で、作品の面白さや放送・公開日時などをしっかりと視聴者に伝えてくれる。

番組冒頭で宣伝を終わらせてくれることは、出演者にも視聴者にもメリットがあると考えられる。出演者のメリットとしては、早々に宣伝を済ませることで肩の荷が下りるのではないだろうか。よく、番組の最後にならないとお知らせの時間をもらえず、そこまで緊張してた、といった出演者の方のエピソードを見るが、番組冒頭で一番大事な仕事が完了するため、あとはゲームを楽しむだけでよいのだ。

さらに、冒頭で作品の概要を周知し、嵐がうまい具合に随時番組内容を取り入れたトークを展開してくれる。例えば、劇中で兄弟役のお二人は実際どんな関係なの?など、ごく自然に作品の周知をしてくれるのだ。視聴者も、ただ「〇月〇日公開の映画を見てください!」だけ言われる宣伝よりも、「実際はめちゃくちゃ仲良しな二人が仲悪い兄弟を演じてる作品って面白そうだな」と、印象に残るのではないだろうか。宣伝効果も大きくなれば、ゲストにとっては大きなメリットだ。視聴者にとっても、わかりやすく記憶に残る番宣のほうが見ていて心地よいのではないだろうか。

 

■工夫を凝らされたゲーム

やはり何といってもVS嵐の見どころは各ゲームである。すべてのゲームを書いているとこの記事が終わらない気がするので、番組開始当時からある人気ゲーム「クリフクライム」と「ピンボールランナー」、そして特別企画についてのみ考察したい。

 

<クリフクライム>

ボルダリングのような壁のぼりをするゲームである。エレベーターや「お台場のアゴ」と呼ばれる返しなど様々なギミックが 施された壁にある得点ボタンを押しながら頂上への到達を目指すゲームである。2人のクライマーが交代で登るため、時間配分や担当領域など戦略を考えるための要素がいくつもあり、非常に見ごたえのある企画だ。

こういった体力勝負の企画では、だいたい若い俳優とかそれこそジャニーズとか、時にはアスリートなんかが有利に思える。しかし、体力があって手足が長くて有利に見える人がクライマーになっても、良い記録がでないことがある。ここにクリフクライムの面白さがある。

クリフクライムにおいて、クライマーに比べると地味ながら、非常に重要な役割を果たすのが、「サポーター」と呼ばれるグリップを受け渡すチームメンバーである。登っていく壁の先には一部しかグリップがなく、登り続けるには途中でグリップを仲間から受け取り、クライマー自身が好きなところにグリップを差し込んでいかなくてはならないこのゲーム。グリップの受け渡し方法が、天井から吊られたグリップを振り子の要領で投げるというのも面白い。確実にクライマーの手に渡すのは難しいようで、特に経験値のないゲストチームの挑戦時には、グリップの受け渡しがうまくいかず、時間をロスしてしまうなんて場面もよくあるのだ。体力勝負のゲームに見えて、実は戦略とチームワークがなければ好成績を出せない、非常に志向を凝らしたゲームである。

 

ピンボールランナー>

頭の上にカゴを背負ったランナーが、頭上からランダムに降ってくるボールを捕えて得点していくこのゲーム。ランナーはランニングマシンを1分間走り続けなければならない。さらに、ランナーからはボールがどのように落ちてくるかが直前まで見えない構造になっており、指令台にいる仲間からの指令が重要になる。

こちらも、1分間しっかり走り続けられる体力があるだけでは、好成績は出せない。クリフクライムのグリップと同様、仲間からの指令が的確でないと体力がどれだけあっても得点はできないのだ。

指令台には複数人が立つので、通常の黄色ボールよりも得点の高いピンクボールの時だけ、違う人の声で指令をするという作戦が一般的である。黄色ボールの指令を出している人も、ピンクボールが出てきたら、すぐにピンク担当者と交代しなければならない。交代している間にボールが落ちてしまったなんてシーンもよく見かける。また、指令はある程度の選別も必要で、いくら落ちてくるボールがあるからと言っても、左端の1番から急に右端9番まで行けと言っても無理である。動きに無理のない範囲で、かつ得点がとれるよう適切にランナーを導いてあげなければならない。頭脳と体力を別の人で担っていく複雑なゲームなのだ。

 

〈特別企画〉

「音嵐」(複数の曲を同時にかけて何の曲が流れているか当てるクイズ)、「擬音de嵐」(お題となる絵などを見て適当な擬音を答え、チーム内で一致した人数が得点に加算されるクイズ)、「カタカナ嵐」(お題となるカタカナの単語を、チームの代表者がカタカナを使わずに説明して、メンバーにお題のカタカナを回答してもらうクイズ)など、近年のVS嵐には番組中盤で行われるクイズ系ゲームが増えてきた。番組開始当初はクリフクライムに代表される、所謂スポーツ系のゲームが多かったが、最近はゲーム内容も多様化してきている。単純にレギュラーの嵐も年を重ねてきて、既にアラフォーになっているのもあるかもしれないが(笑)、体力よりも知識や作戦、チームワークのみで得点できるゲームになっている。また、これにより体力のない女性や年配の出演者が多いチームや、逆に体力がありすぎるアスリートチームなどとの対戦でも、番組全体を通して割と僅差のシーソーゲームになったりする。さらには、視聴者も一緒に参加しながら番組を見られるので一石三鳥だ。

 

■垣間見える嵐のチームワーク

嵐は、VS嵐に10年以上出演し、すべてのゲームを経験してきたいわばVS嵐のプロである。そのため、ゲームによっては嵐チームのみレギュラーハンデが加えられることもあるが、嵐のチームワークには感動することも多々ある。

例えば、先ほど挙げたクリフクライムのグリップ受け渡し。先述の通り、ゲストチームはクライマーが振り向いて「グリップ頂戴!」と催促してからサポーターが準備して、グリップを投げるも、届かなくて、やり直して、やり直してる間にクライマーはグリップを諦めて自力で登っちゃったり・・・といった状況になることがある。しかし、嵐チームのグリップ受け渡しは見事だ。まず、サポーターはクライマーの動きをよく見て、先の動きも予想して、クライマーがグリップを欲して振り返った時には、すでにグリップが飛んでいるのだ。不測の事態に備え、次のグリップも飛ばす用意ができているので、もし1投目でうまく届かなくても、すぐに2投目を投げてクライマーのロスタイムを最小限に抑えている。また、クライマーが得点ボタンを押し忘れて通り過ぎた際には、すぐにサポーターから「下に押し忘れがある!」という声が出る。得点も疎かにせず、確実に点数と時間を稼ぐ嵐のチームワークは素晴らしい。特にグリップは、素早く不備なく受け渡すためあっという間だ。放送の際にはぜひ注目して見てほしい。

 

■ゲストに寄り添った特別企画やトークテーマ

VS嵐は、ゲストチームの宣伝作品などに合わせて、ゲーム内容を柔軟にアレンジしてくれる。番組中盤の特別企画でいうと、プラスワンゲストが映画「スマホを落としただけなのに」主演の北川景子さんだった回では、映画タイトルにちなんでスマホ早打ちしりとり企画が実施された。レギュラーゲームであっても、ラグビー日本代表チームが来れば、ピンボールランナーで落ちてくるボールがラグビーボールの形になる。サッカー選手が来れば、キッキングスナイパーのボールをサッカーボールにしたりと、様々な場面でゲストに寄り添ったアレンジをしてくれるのだ。ゲストにとってもホームに近くなるし、毎回やっている・見ている嵐や嵐ファンも、いつもとちょっと違うことで新鮮な気持ちで楽しめる。マンネリ化させないのだ。

ゲームだけでなく、ゲーム前などのトークでも、天の声さんから番組タイトルや内容にちなんだ質問を投げかけられ、そのゲストが来なければ他では聞くことができなかったようなエピソードを聴くことができる。 

 

■歌唱、BABA、Bet・・・

 もう一つ、番外編的なVS嵐の魅力として、特別企画がある。嵐の新曲リリース前後になると歌唱VTRが流れたり、まるまるレギュラー1回分特別編として、BABA嵐やBet de 嵐などの特別企画が年に数回放送されている。

歌唱コーナーを設けることは、嵐ファンにとってはもちろんのこと、嵐の曲をわざわざ買わなかったり出演する音楽番組を見ないような一般視聴者が、嵐の“アイドル”らしいところを見られる機会である。VS嵐ではいつも眠そうな大野くんがこんなに踊ってる!みたいな驚きなど、嵐の新たな魅力に触れられるだろう。

特筆したいのはBABA嵐。なんと言ってもゴールデンタイムの番組で芸能人がトランプのババ抜きをするだけという一周まわったような企画である。これを成立させているのがVS嵐のすごいところだ。企画開始当初は、単純にババ抜きをして最弱王を決めているだけだったが、最近は「シャッフルタイム」というVS嵐独自のルールを作成することで、ただのババ抜きにならずバラエティ番組として成立するように工夫されている。またお正月や夏休み頃のSPとして放送するため、視聴後には家族や親戚とババ抜きがしたくなる。なんて平和で優しい番組なんだろう。

 

 

つまり、VS嵐はたくさんの工夫に溢れた番組で、年齢問わず多くの方が楽しめるように構成されている素晴らしい番組なのだ。

少なくとも嵐が活動休止を発表する2020年末で放送は一旦終わるだろう。嵐の活動復帰がいつになるのかはわからない。でもその時には、是非、また楽しいVS嵐を放送してほしい。